交通事故の示談後に後遺症がでたら?時効はあるの?

交通事故に遭った場合には、「示談交渉」を避けて通ることはできません。示談交渉とは、「当事者同士で話し合って、諸々生じた損害額の負担金額を、双方の責任の割合に基づいて決めること」です。交渉で決められた内容は「示談書」にまとめられ、法的な拘束力を持ちますので、後から後悔しないためにも示談交渉について理解しておくようにしましょう。

交通事故の示談交渉ってどう始まるの?

示談交渉と言っても何をすればよいのか、いつからどのように始めるものなのか、分からないという人がほとんどではないでしょうか。示談交渉に至る流れは次の通りです。まず、交通事故が発生すると警察へ通報を行います。

これは必須ですよね。そして、実は事故の直後から示談交渉は始まっています。警察に連絡するのと同じタイミングで、被害者・加害者ともに氏名と連絡先を確認して、双方で連絡がつくようにしておきましょう。「あとから警察に聞けばいいや」と考えたとしても、警察が相手の連絡先を教えてくれるとは限りません。

示談交渉は当事者が行うことであって警察は介入しないため、連絡先を教える義務がないのです。連絡先が分からなければ交渉することができませんので、この点については被害者は特に充分な注意が必要です。次に、示談交渉は当事者同士の話し合いとは言っても、実際には加害者側は、保険会社の担当者に交渉を代わって行ってもらうケースがほとんどです。

そのため交渉も、保険会社の担当者が主導することが多くなるでしょう。被害者側が注意すべきポイントの2つ目は、この、加害者側は保険会社の担当者が交渉を代理するという点です。これは、プロを相手にして交渉を進めなければならないということを意味します。

相手の主導に任せていたのでは納得のいかない結果になってしまうことがありますので、被害者も相応の準備をして臨むことが必要になるでしょう。それほど大きなケガをしておらず事故の程度が軽い場合には、比較的早く賠償金額の話し合いに入ります。

死亡事故の場合にも賠償金額が確定しやすいため、早く交渉に入ることはできるのですが、被害者遺族の気持ちを考えて、ある程度の期間を置いてから交渉に入ることが多いようです。

示談後に後遺症が出たら慰謝料を請求できるのか?

結論から言うと、示談交渉後に後遺症が出たとしても、その分を後から慰謝料として加害者側に追加請求することは基本的にできません。示談交渉で取り交わした示談書には、通常「これ以外の金額は一切請求しない」という意味の文言が記載されています。

示談書は法的な拘束力を持つものですから、それを破ることはできないのです。ただし、一旦示談に至った場合であっても、例外的に交渉をやり直せる場合があります。それは、「新事実が明らかになったが、その事実が示談成立当時に予測できなかった場合」と、「明らかになった新事実と、交通事故との間に因果関係が認められる場合」です。

これを示談後に出た後遺症の場合に当てはめると、後遺症が出ることが示談成立時に予測できず、現れた後遺症と交通事故との間に因果関係が認められれば、示談交渉をやり直せる可能性があります。とは言え、後遺症が出た時点で事故からある程度の時間が経過している場合には、因果関係は簡単には認められません。

示談のやり直しを求めることは難しくなります。

示談後の後遺症で慰謝料を請求できるようにする方法

示談後に後遺症が出たにも関わらず、慰謝料を加害者に請求できずに後悔しないためには、どうすれば良いのでしょうか。示談書に「今後もしこの交通事故を原因とした後遺症が現れた時には、その損害賠償金については別途協議を行うこと」というような意味の一文を入れておけば、示談交渉のやり直しを加害者に請求するにあたって、多少は被害者にも有利になる可能性があります。

しかし、後遺症と交通事故との間に因果関係があることは、依然として被害者が証明しなければなりません。また、そのような一文を記載することに加害者側が同意しないことも、充分に考えられます。

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ケガの示談には消滅時効がある!

前述したように、示談後に後遺症が出たとしても交渉のやり直しは難しいですので、被害者としては示談書を取り交わす前に時間をかけて、ケガの状況を見極めてから交渉に臨みたいところです。

しかし、示談交渉はそれほどのんびりとは行えないことをご存知でしょうか。消滅時効というものがあり、一定の期間が経つと、被害者が加害者側に損害賠償を請求することはできなくなってしまうのです。この消滅時効は、「被害者が損害及び加害者を知った時」を起算点としてスタートします。

そして、起算点から3年間で完成します。完成するというのはつまり、損害賠償を請求できる権利が消滅するということです。交通事故の場合で言うと、ケガを負って後遺症が出ていなければ、交通事故が発生した日を起算点として消滅時効が開始し、その後3年間で、損害賠償請求権が消滅します。

後遺症が出ている場合には、症状固定の日から3年間で損害賠償の請求権が消滅します。症状固定というのは、かかりつけの医師が、症状について「治療を続けたとしてもこれ以上は良くならない」と判断して、「後遺障害診断書」を作成した状態です。

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交通事故におけるその他の消滅時効

3年間の消滅時効は、交通事故における他の諸々の請求権に関しても発生します。自賠責や任意保険会社へ加害者が請求を行う際にも、3年間の消滅時効があります。ただし任意保険会社の場合には商品によって、請求権が消滅する時を別途定めていることがありますので、よく確認することが必要です。

また、交通事故によって物的損害が発生したり、被害者が死亡した時にも賠償金を請求することができますが、この請求権も3年間で消滅します。消滅時効について考える場合には、いつを起算日とするかにも注意するようにしましょう。

物的損害の場合には、交通事故の発生日から時効がスタートします。一方、被害者が死亡した時の賠償金請求権は、被害者が死亡した日が時効の起算日です。また、ひき逃げ事故の場合には加害者が不明です。他と同じように3年間で請求権が消滅してしまうと被害者には不公平であるため、ひき逃げ事故の損害賠償金請求権の消滅時効は20年間です。

この20年の間に加害者が発覚すると、そこから改めて3年間の消滅時効が開始します。ちなみに、交通事故が午前0時に発生しない限り、発生日は起算日には参入しません。1日が24時間を切っていると、法的に不公平となり得るからです。

逆に、午前0時に事故が発生すれば、深夜であってもその日から時効が開始します。

示談交渉における被害者と加害者の思惑の違い

これまで述べてきたように、被害者のケガの状況を見極めるのには時間が必要ですし、後遺症が出る可能性もあります。それらを考え合わせると、被害者としては消滅時効にかからない範囲で、できるだけじっくりと加害者側と示談交渉した方が良い結果となりやすいと言えます。

しかし、加害者側の思惑は全く異なります。加害者からすると、できるだけ速やかに交渉を終わらせて賠償金の金額も決めたいというのが本音です。時間が経てばたつほどケガの治療費などはかさみますし、新たな後遺症が出て賠償金の金額が高くなるのを避けたいからです。

このように、双方は根本的に異なる思惑で動くため、示談交渉で揉めることは珍しくありません。そもそも加害者側が交渉に応じないというケースもあります。トラブルを避けて、できるだけスムーズに示談交渉を成功させたいという時には、交通事故弁護士などの経験豊富な専門家に相談してみるのが良いでしょう。